東京高等裁判所 昭和26年(け)36号 判決
本件異議申立の理由の要旨は、被告人はさきに東京高等裁判所に対し上訴権回復願と上告申立書を提出したところ、東京高等裁判所は理由なきものとして、上訴権回復はこれを許さない。上告は棄却するという決定をしたが、被告人が法定の期間内に上告申立書を提出することができなかつた理由は、法律を知らなかつたことと、友人及び弁護人から被告人に宛てた上訴に関する速達の書面が東京拘置所において検閲のために遅れたためで、被告人にとつては全く不可抗力であるのに右上訴権回復の請求を許さず、上告を棄却する旨の決定をしたのは違法であるというのである。しかし上訴期間は原判決言渡の際裁判長から被告人が告げられているのであるし、上訴の申立は被告人からできるのであるから、友人や弁護人から被告人に宛てた上訴に関する書面が、拘置所内で検閲のため被告人に交付されたのが遅れたとしても、上訴の申立は被告人に於てその期間内に何時でも自由にできた筋合であるから、所論のような事情は未だ以て刑事訴訟法第三百六十二条所定の自己又は代人の責に帰することができない事由に該当するものとは謂い難く、記録に徴するも、右の他に同法条所定のような特別なる事由が存したことも認められない本件に於ては被告人からの上訴権回復の請求は許さるべきものでない。従つて原決定には何等違法の点がないから本件異議の申立は理由がない。